生活習慣病とは
日頃からの生活習慣がきっかけとなって発症する病気を総称して生活習慣病と言います。具体的には、食習慣(過食、偏食、食事時間が不規則 等)、慢性的な運動不足、酒やたばこなどの嗜好品の過剰摂取、ストレスなど、不摂生なライフスタイルを蓄積させてしまうことで発症するようになると言われています。
代表的な生活習慣病としては、高血圧、糖尿病、脂質異常症などが挙げられますが、これらはいずれも自覚症状が現れにくい特徴があります。したがって病状を進行させがちになるのですが、放置のままだと血管(動脈)を常に損傷し続けることにもなりますので、やがて動脈硬化を招くようになります。それでも気づかないとなれば、血管内腔が狭窄して血流が悪化する、あるいは血管を詰まらせるなどすれば、脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)や虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、閉塞性動脈硬化など重篤な合併症(ある病気に伴って起きる別の病気)を発症し、その状態になって初めて気づいたという患者様も少なくありません。
このような状態にならないためには、定期的に健康診断を受診し、検査結果から関係があるとされる数値(血圧、血糖値、LDLコレステロール 等)が異常であるとの指摘を受けた、生活習慣病には罹患していないがメタボリックシンドロームと判定されたという場合は自覚症状がなくても当院を一度受診し、生活習慣病発症の有無の検査をするほか、罹患している、あるいは生活習慣病予備群であると診断された場合は、(生活習慣病に対する)治療もしくは予防対策を行っていきます。
主な生活習慣病
高血圧、糖尿病、脂質異常症、脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)、高尿酸血症(痛風)、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、動脈硬化、肥満症 など
【代表的な生活習慣病】
脂質異常症とは
血液中に含まれる脂質が血中脂質ですが、その中でもLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)の数値が基準値よりも高い、もしくはHDL(善玉)コレステロールの数値が基準とされる数値よりも低いと判定されると、脂質異常症と診断されます。
この脂質異常症に関しては、3つのタイプ(高LDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症、低HDLコレステロール血症)に分類されます。ただいずれのタイプであっても血管内でLDLコレステロールは蓄積されやすくなります。それによって動脈硬化が引き起こされやすくなるわけですが、それでも放置が続けば、血管狭窄による血流悪化や血管閉塞などがみられるようになります。そのような状況が、脳の血管付近で起きれば、脳血管障害(脳梗塞、脳出血 等)、心臓の血管付近であれば虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)などの合併症がみられることもあります。
なお脂質異常症と診断される基準(数値)につきましては、次の通りです。
- LDLコレステロール値≧140mg/dL(高LDLコレステロール血症)
- 中性脂肪≧150mg/dL(高トリグリセライド血症)
- HDLコレステロール値<40mg/dL(低HDLコレステロール血症)
自覚症状がないので進行させやすい
脂質異常症の患者様の大半は、健康診断などによる血液検査の結果から発症や数値の異常に気づくようになります。ただ他の生活習慣病と同様に自覚症状が現れにくいことから、放置の状態が続き、上記で挙げたような重篤な合併症を引き起こしたということも少なくありません。したがって、何の症状がない場合でも、コレステロール(LDL、HDL)や中性脂肪の数値を確認し、異常という場合は一度当院をご受診されるようにしてください。
治療について
治療あるいは予防が必要と医師が判断した場合、まずは生活習慣の見直しから始めていきます。
その中でも食事療法が中心となります。内容としては、コレステロールを多く含む食品は避けるようにします。具体的には、レバー、卵黄、脂身が多い肉、魚卵、乳製品などです。さらにコレステロールを血管内に蓄積させないようにするため、野菜、きのこ類、海藻等、食物繊維が多く含まれる食品は積極的にとります。また中性脂肪の数値が高い方に関しては、過食を避けるほか、糖分(甘いジュース、お菓子 等)が多めの食品やアルコールは控えます。このほか低HDLコレステロール血症と診断された方については、トランス脂肪酸を多く含む食品(マーガリン、ショートニング 等)を過剰に摂取すると、さらに体内のHDLコレステロールを減少させることから、これらを控えるようにします。
上記の対策と共に、日常生活に運動を取り入れることができれば、トリグリセライドの数値を下げ、HDLコレステロールの数値を上昇させる効果も期待できますので、運動療法も併せて行うようにします。運動量に関しては、無理のない程度で充分とされています。具体的には、息がやや上がる程度の有酸素運動で、軽度なジョギングであれば1回30分程度としています。ただ継続的に行うことが必要で、効果を時間するまでに数ヵ月程度かかることもあります。
このように生活習慣を改善しても目標とする数値までLDLコレステロールの数値が下がらないとなれば、併行して薬物療法も行います。主にスタチン系の内服薬を使用しますが、服用方法などについては、医師の指示通りにしっかり行うようにしてください。
メタボリックシンドロームとは
BMI(ボディマス指数:体重÷身長÷身長で算出。標準体重は身長×身長×22で算出)の数値が25以上の場合を肥満と言いますが、肥満によって健康障害が伴っていると肥満症と診断されます。一方メタボリックシンドローム(通称:メタボ)は、BMIの数値が25以上でも、25以下であっても内臓脂肪型肥満の方(腹囲のサイズが男性85cm以上、女性90cm以上)を対象としています。
この内臓脂肪型肥満とされる方で、高血糖(空腹時血糖が110mg/dL以上)、高血圧(収取期血圧が130mmHg以上、または拡張期血圧が85 mmHg以上)、脂質異常(トリグリセリドが150 mg/dL以上、またはHDL(善玉)コレステロールが40 mg/dL未満)のうち、2つ以上が該当していると確認されるとメタボリックシンドロームと判定されます。
上記の数値については、糖尿病や高血圧、脂質異常症と診断される基準の数値よりも低いのですが、内臓脂肪型肥満の状態にあると、血糖、脂質、血圧がやや高めというケースでも動脈硬化を促進させやすく、脳血管障害(脳梗塞 等)や虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)などの重篤な病気を発症させるリスクが高まります。
なお特定健康診査(特定健診:生活習慣病に罹患しやすい40~74歳の世代を対象とし、主にメタボに着目した健診)の結果からメタボと判定された方につきましては、医師より特定保健指導を受けられることを勧められます。
この特定保健指導とは、生活習慣病を発症するリスクが高いとされる方で、日頃の不摂生を見直すことで生活習慣病に関係する数値が改善され、(生活習慣病に対する)予防効果が見込める方に行われます。「積極的支援」と「動機付け支援」の2種類がありますが、リスク数が高い方は前者の支援を受けることになります。これらの内容とは、生活習慣の見直し(食事の摂取カロリーを適正にする、日常生活に運動を取り入れる 等)になるのですが、その際に専門のスタッフ(保健師、管理栄養士 等)がサポートを行っていきます。